B2.12.1、B.4、B.5系統は免疫をすり抜け易い (2022年6月24日)
オミクロン株には複数の系統が報告されている(図1)。最初に世界で拡大したのはBA.1系統であったが、その後、世界的にBA.2系統に置き換わった。さらにアメリカなど海外ではBA.2.12.1系統が主流となり、さらにBA.4、BA.5系統が急増している(図2、CDCの報告)。
6月22日にNew England Journal of Medicine誌で発表された論文では、ワクチンや既感染によって獲得された抗体の、各系統に対する中和活性(感染を防ぐ能力)を測定している。ファイザー社製ワクチン3回接種を完了し、かつ新型コロナウイルスの感染歴の無い27名を対象として調査を行った。2回接種後6ヶ月の時点では、いずれの系統に対しても中和活性はほとんどなかったが、3回目接種2週間後には中和活性が獲得されていた(図3)。しかし従来株に比べてオミクロン株に対する活性は弱く、BA.1やBA.2系統では約6分の1、BA.2.12.1系統に対しては約14分の1,そしてBA.4やBA.5系統に対しては約21分の1の中和活性しか示さなかった。
論文ではさらにBA.1もしくはBA.2に感染した27名の中和活性も測定している。このうち26名は何らかのワクチン接種を行っていた。感染後平均29日目において、ワクチン3回接種かつ未感染の27名に比べて、既感染の27名においてより高い中和活性が観察された(図4)。ワクチン接種群と同様に、オミクロン株に対する中和活性は従来株に対してよりも低かった。BA.1やBA.2系統に対しては約6分の1、BA.2.12.1系統に対しては約10分の1,そしてBA.4やBA.5系統に対しては約19分の1の中和活性しか示さなかった。
これらの結果は、BA.2.12.1、B.4、B.5系統はB.1やB.2系統よりもワクチンや既感染により獲得された免疫をすり抜ける力が強いことを示す。
イギリス政府は、ウイルスの遺伝子解析データを毎週、報告している。6月17日のデータでは、B.2系統が主流となっているが、B.4およびB.5系統も増加している。
国立感染研が6月3日に発表した報告によると、我が国ではBA.2系統が主流をしめている。欧米との往来が増加していることを考えると、我が国においてもBA2.12.1、さらにはBA.4/5系統が主流となっていく可能性がある。