授乳とワクチン
授乳中のワクチン接種が、母親と新生児・乳児に与える影響については、これまで報告がありませんでしたが、イスラエルから査読後の論文が報告されました。
本論文では、授乳中にファイザー社製ワクチンの接種を受けた84名について、母乳中の抗体の量を測定しました。抗体にはいくつかの種類がありますが、分泌物に多く含まれるIgAと、血液中に存在するIgGについて測定しています。その結果、IgAは1回目接種の2週間後で約62%の母親の母乳で検出され、2回目接種の1週間後では約86%の母乳で、3週間後でも約66%の母乳で検出されています。一方、IgGは1回目接種後3週間目でも検出されませんが、2回目接種後1週では約92%の母乳で、2週や3週後では約97%で検出されています。
母子ともに、重篤な副反応は見られませんでした。母親における局所の痛みなどの軽微な副反応は1回目接種後では約56%で、2回目接種後は62%にみられました。4名の子供ではそれぞれ、母親の接種後7、12、15、20日目に発熱が見られ、咳などの風邪症状が認められました。1名は月齢を考慮し発熱の経過観察で入院、抗生剤が投与されましたが、他の3名は経過観察のみで軽快しました。
今回の論文では、母乳中の抗体の中和活性(感染を防ぐ力)は調べられていませんが、母親のワクチン接種により形成される抗体が、母乳を介して子供にも移行する可能性が示唆されました。