山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

ワクチンの安全性は?(発熱等の副反応)

ノババックス社製ワクチンの副反応(2022年7月24日)

日本で4番目に承認されたノババックス社製のワクチンは、ウイルスのたんぱく質を用いています。アメリカとメキシコの約2万人を対象とする臨床試験を報告した論文によると、発熱等の全身性の副反応は1回目よりも2回目接種後に多く認められています。しかし、発生頻度はファイザー社製やモデルナ社製のmRNAワクチンに比べると低いと報告されています。例えば2回目接種後の発熱は、7月4日に紹介したように、国内で、ファイザー社製で約35%、モデルナ社製で約70%で認められていますが、ノババックス社製では6%と報告されています

イギリスで約15000人を対象にして行われた臨床試験の報告においても、同様の結果が示されています。
図 ノババックス社製ワクチンの副反応

日本における副反応の報告(2022年7月4日)

初回接種(1,2回目)および3回目接種後の副反応について、国内の解析結果を厚労省が発表しています。
新型コロナワクチンの副反応について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

全身倦怠感、頭痛、発熱等の全身症状は、1回目接種後は稀ですが、2回目接種、3回目追加接種後は高頻度に認められています(図は発熱に関するデータ)。

初回接種(1,2回目、ファイザーおよびモデルナ社製)
000830259.pdf (mhlw.go.jp)
追加接種(初回接種はファイザー、追加接種はファイザーもしくはモデルナ社製)
000928717.pdf (mhlw.go.jp)
図1 ワクチン接種後の発熱(厚労省のデータ)

ファイザー社製ワクチンの副反応(2021年5月)

ファイザー社製のmRNAワクチンについて、厚生労働省が行った副反応などの調査報告(ワクチン接種を行った約2万人の観察研究)が5月26日にアップデートされました。またアメリカCDCがファイザー社製とモデルナ社製のmRNAワクチンの副反応について論文(査読後)を発表しました。

厚労省のアップデート(5月26日)によると、発熱、倦怠感、頭痛などの全身反応は、高齢者の方が若年者より頻度が少ないと報告されています。例えば、2回目接種後の37.5℃以上の発熱は、20歳代では約50%に報告されているのに対して、50歳代は約30%、70歳代では約10%と減少しています(図1)。2回目接種後の全身倦怠感は、20歳代では約80%に、70歳代では約30%に認められています(図2)。
厚労省の最初の発表(3月26日)
000759518.pdf (mhlw.go.jp)
によると、37.5℃以上の発熱は1回目接種後は3.3%に、2回目接種後は35.6%に発生しています。2回目接種後に37.5℃以上の発熱した人のうち、半数強は38.0℃以上の発熱でした。倦怠感と頭痛は、1回目接種後は23.2%と21.2%に、2回目接種後は、67.3%と49.0%に認められています。
一方、接種部位の疼痛は1回目、2回目とも約90%に、接種部位の発赤や腫脹は、1回目、2回目ともに約10%に認められました。
単純比較はできませんが、2009年の新型インフルエンザに対する不活化ワクチン(1回接種のみ)の同様の研究では、発熱、倦怠感、頭痛は、それぞれ3.1%、19.0%、14.1%に認められていました。

今回の日本の結果は、海外からの報告と同じ傾向で、発熱、悪寒、倦怠感、頭痛などは2回目接種後の方が、そして若年者の方が、それぞれ発生頻度が高いことが報告されています。
実際に接種を開始したアメリカで、約166万人の被接種者における副反応をまとめたCDCの論文
Reactogenicity Following Receipt of mRNA-Based COVID-19 Vaccines | Vaccination | JAMA | JAMA Network
によると、副反応は接種の翌日に最も頻度が多く、1回目接種においては、接種部位の疼痛が約65%、倦怠感、頭痛、筋肉痛が約20%に、悪寒や発熱が約7%に報告されています。2回目接種においては、接種部位の疼痛は約65%に、倦怠感、頭痛、筋肉痛が約40%に、悪寒や発熱が約20%に報告されています。65歳以上と65歳未満を比べると、65歳以上の方がいずれの副反応の発生頻度も低かったと報告しています。
臨床試験の結果(New England Journal of Medicine誌の査読後論文)によると、接種部位の疼痛が66~83%に、倦怠感が34~59%に、頭痛が25~52%に、筋肉痛が14~37%に、関節痛が9~22%に、悪寒が6~35%に、発熱が1~16%に報告されています。年齢でみると55歳以下が56歳以上より、接種回数で見ると2回目が1回目より、それぞれ副反応の頻度が高い傾向にありました。
図1 ファイザー社製ワクチン接種後の発熱
図2 ファイザー社製ワクチン接種後の全身倦怠感
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