山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

ワクチンの安全性は?(アナフィラキシー反応)

ファイザー社製のワクチンは安全でしょうか?

ファイザー社製のワクチンはアメリカを中心に接種が進み、副反応に関する査読後の論文がいくつか報告されています。重い副反応であるアナフィラキシーについて、2月の論文では発生頻度は100万回に数回と報告されていましたが、3月にボストンの病院で、接種者全員の調査を行った結果では、1万人に数回程度とより高い頻度が報告されています。いずれも適切な処置で全員が回復しています。

212日のアメリカ医師会誌の論文(査読後)では、1214日から118日までに行われたファイザー社製ワクチン約1000万回、モデルナ社製ワクチン約750万回の接種において、アナフィラキシーと呼ばれる強いアレルギー反応はファイザー社製が100万回に4.7回、モデルナ社製は100万回に2.5回と、非常に少ない頻度で報告されています。アナフィラキシーが起こった人の94%は女性、77%は過去にアレルギー反応の既往がありました。76%は接種後15分以内、89%30分以内に発症しています。そして、全例とも適切な治療により速やかに回復されています。この論文ではアメリカ疾患対策センター(CDC)に報告があったケースのみが報告されています。

一方、38日に報告された別の論文
Acute Allergic Reactions to mRNA COVID-19 Vaccines | Allergy and Clinical Immunology | JAMA | JAMA Network
ではアメリカ・ボストンの2つの有力病院(マサチューセッツ総合病院およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院)の医療従事者約6万5千人に対して行われた1回目の接種(6割がファイザー社製、4割がモデルナ社製)において、接種3日後の副反応の有無を調査しています。これによると接種部位以外の発赤、痒み、蕁麻疹といったアレルギー反応は約2%で認められ、全身性の蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下といったアナフィラキシーは16名に発生しました。このうち15名は女性、10名はアレルギーの既往、5名はアナフィラキシーの既往がありました。接種からアナフィラキシー発生までの時間は1から120分で、平均17分でした。9名はエピネフリンの投与を受け、1名はICUに入院しました。全員が回復しました。
本報告におけるアナフィラキシーの発生頻度は1万回に2.47回と、上記のCDCの報告よりも高い頻度で発生しています。しかし、この頻度は他の薬剤、例えば造影剤に対するアナフィラキシー発生頻度(Anaphylaxis to Iodinated Contrast Media: Clinical Characteristics Related with Development of Anaphylactic Shock (plos.org))と同程度で、稀な現象であるとしています。

このようにアナフィラキシーは稀に起こりますが、治療法が確立しています。接種後に15分から30分程度、緊急対応の出来る場所で経過観察を行えば、安心です。

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