山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

イギリスから広がったアルファ変異ウイルスの脅威

アルファ変異ウイルスの脅威

イギリスから世界に広がりつつあるアルファ変異型ウイルス(B.1.1.7株)は、感染力が従来のウイルスより70%程度強い可能性が高いと報告されています(根拠1)(根拠2)。実効再生産数(Rt:1人の感染者から何人に感染するか)は、従来のウイルスより0.52から0.74程度高い可能性が示唆されています(根拠3)。また致死率も60%程度高い可能性が示唆されています(根拠4)根拠5)。感染研が行った国内の解析においても、アルファ変異ウイルスは従来のウイルスより感染力が30%程度高いこと、また感染者における0歳から17歳までの子供の割合が、従来ウイルスより2倍弱に増加していることが報告されています。幸い、日本で接種が始まっているファイザー社製のワクチンはアルファ変異ウイルスには有効である可能性が示唆されています(根拠6)。しかしアルファ変異ウイルスにE484Kとして知られる新しい変異が入る事例がイギリス国内で報告されており、ファイザー社製のワクチンの効果が低下する可能性があります(根拠7)

複数の報告があること、さらに日本の現状を見ても、アルファ変異ウイルスの感染力が従来型より強いことはほぼ間違いないと考えられます。影響は極めて深刻です。国内の解析では、首都圏で緊急事態宣言が続いていた本年2月1日から3月22日のデータに基づいており、この間の従来型ウイルスの実効再生産数Rtは0.94と1を下回り、国民の努力により収束に向かっていたことがわかります。一方で、同期間におけるアルファ変異ウイルスのRtは1.23と、感染拡大傾向が続いていました。アルファ変異型ウイルスに対しては、2回目の緊急事態宣言下で行われた程度の対策では、不十分であることが危惧されます。

変異株の致死率が高いとすると、医療への影響も第3波より大きくなることが危惧されます。ウイルスへの対策はシーソーに例えられることがあります(図)。国民の努力や政府・自治体による対策とウイルスの感染力・病原性のバランスです。前者が重ければ収束に、後者が重ければ感染拡大につながります。アルファ変異株が主流を占めると、シーソーの相手の体重が100キロから170キロに増えることになります。これまでの努力や対策では到底太刀打ちできない可能性が高いと思われます。
シーソーの図は下記より改変しています。
seesaw.jpg (453×246) (bp.blogspot.com)

この変異型ウイルスについて、ジョンソン首相が感染力が最大で70%高いと2020年末に発言されていましたが、これは同国のいくつかの調査に基づいていると考えられます。
一つ目は政府への諮問機関であるNERVTAG(New and Emerging Respiratory Virus Theats Advisory Group)の報告
NERVTAG meeting minutes on SARS-CoV-2 variant under investigation. 18 December (khub.net)
で、査読(他の研究者による検証)は受けていませんが、変異型のウイルスは従来型よりも71%感染力が強いと報告しています。

もう一つはイギリス公衆衛生局からの報告
Variant of concern technical briefing (publishing.service.gov.uk)
で、やはり査読は受けていませんが、変異型のウイルスの実効再生産数(Rt:一人の感染者から何人に感染するか)は、従来のウイルスより0.52から0.74程度高いと報告しています。

そして3月3日には査読後の論文がScience誌に報告されました。
Estimated transmissibility and impact of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 in England | Science (sciencemag.org)
これによると、変異型ウイルスの感染力はイギリス国内の感染状況の解析から、従来のウイルスに比べて43から90%高いとしています。さらに同じ変異型ウイルスは、他国(デンマーク、スイス、アメリカ)でも59から74%高い感染力を示していると報告しています。

また3月10日にはイギリスから、変異型のウイルス感染症による死亡率は32%から104%(中央値64%)高いことが査読後の論文で報告されています。
Risk of mortality in patients infected with SARS-CoV-2 variant of concern 202012/1: matched cohort study | The BMJ

イギリス公衆衛生局からの追加発表(未査読)によると、ウイルスに感染した人から2次感染の割合は、従来のウイルスでは9.8%にあったのに対して、変異型ウイルスでは15.1%に増加していると報告されています。
Investigation of novel SARS-CoV-2 variant (202012/01): Technical briefing 2 (publishing.service.gov.uk)

病原性については、上記の査読後の論文に加え、査読前の報告もあります。
NERVTAG_note_on_B.1.1.7_severity_for_SAGE_77__1_.pdf (publishing.service.gov.uk)
この報告によると、変異型ウイルスの致死率は、従来のウイルスと比べて1.3から1.9倍程度高い可能性があるとされています。

図 対策とウイルスのシーソー
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