山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

第5波が懸念されるデルタ変異

インドから広がったデルタ変異

5月11日、インドから広がった新しい変異型ウイルスを、WHOがVOC(Variant of Concern、注視すべき変異)に指定しました。
同変異型ウイルスには、3種類のサブグループ(B.1.617.1、B.1.617.2、B.1.617.3)があります。

B.1.617.1 B.1.617.2 B.1.617.3
G142D変異
L452R変異
E484Q変異
P681R変異

5月31日、WHOはB.1.617.1をカッパ変異と、B.1.617.2をデルタ変異と命名しました。

インドでは当初、イギリスから広がったB1.1.7株(アルファ変異)と共にカッパ変異(B.1.617.1株)が主流でしたが、現在ではデルタ変異(B.1.617.2株)が増加しています。イングランド公衆衛生庁の6月25日の報告では、6月になって感染者が再増加していますが、大部分がデルタ型となっています。さらに6月14日のLancet誌の論文では、スコットランドでも急速にアルファ型からデルタ型に置き換わったことが報告されています(図1)。また世界的に見ても、アジア、オセアニア、北米、アフリカでデルタ変異ウイルスが急拡大しています。
同庁は、デルタ変異に新たな変異(K417N)が加わった例があるとして、注意を喚起しています。同変異は日本からも報告されています。

また同庁の6月25日の評価では、デルタ変異とアルファ変異を比較すると、高い信頼度で、デルタ変異の方が感染力が強く、ワクチンの効果は減弱するとしています。例えば、家庭内での2次感染の割合は、B.1.617.1株やB.1.617.2株は、B.1.1.7株より約1.5倍高いと報告しています。また6月25日の評価では、病原性もデルタ変異がアルファ変異より高い可能性があるが、さらなるデータが必要としています。

感染力について、同庁は、家庭内での2次感染の割合は、B.1.617.1株やB.1.617.2株は、B.1.1.7株より約1.5倍高いと報告しています。

デルタ変異ウイルスの病原性については、上記のLancet誌の論文で、入院率がアルファ変異ウイルスの約2倍であると報告しています。ハムスターへの感染実験から、従来株よりも病原性が高いという査読前の報告もあります。

ワクチンの効果に関しては、やはり上記のLancet誌の論文でファイザー社製ワクチンの2回接種のデルタ型に対する感染抑制効果は79%と、アルファ型に対する92%の効果と比べると少し低いものの、依然として高い効果があることが報告されています。
またイングランド公衆衛生庁も6月14日に査読前のデータを公表しています。これによると、ファイザー社製のワクチンは、デルタ型変異ウイルスによる入院を、2回接種後は96%、1回接種でも94%、減少させたとしています。同庁は、ファイザー社製ワクチンの2回投与により、デルタ型変異ウイルスの発症を88%予防したという有望なデータを5月20日にも公表しています。
一方、イスラエル保健省は、ファイザー社製ワクチンがアルファ変異株の感染や発症を抑える効果は90%程度であったのに対して、最近、同国で拡大しているデルタ変異株の感染や発症を抑える効果は66%程度に低下していると7月5日に発表しています。入院を防ぐ効果は90%以上と高い効果を維持しているとしています。7月6日は根拠となるデータを公開しました。重要な部分がヘブライ語のため完全には理解できませんが、6月5日までは94%以上であったワクチン効果が、6月6日から7月3日の期間においては、64%と低下しています。さらなる検証が必要です。

実験室でのデータも複数、論文として公開されています。
7月7日に公開されたNew England Journal of Medicine誌の論文では、モデルナ社製やファイザー社製ワクチンを2回接種した人の血液中の中和抗体(ウイルス感染を抑える抗体)の量をはかっています。従来型に比べて、デルタ変異株への中和活性は、両社のmRNAワクチン共に約3分の1に低下しています。カッパ変異株に対しては、従来型の7分の1にまで低下しています。

6月3日に公開されたLancet誌の論文では、ファイザー社製のワクチンを2回接種した人における中和抗体(ウイルスの感染を抑える抗体)の量は、従来型のウイルスに比べるとアルファ型に対しては2.6分の1に低下、デルタ型に対しては、5.8分の1になっています。また従来型ウイルスに対しては1回接種でも多くの人で十分な量の中和抗体が出来るが、デルタ型に対しては2回接種が必要なことを示唆しています。

図1 スコットランドでの変異型の推移
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