山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

インドから広がったデルタ変異

インドから広がったデルタ変異

5月11日、インドから広がった新しい変異型ウイルスを、WHOがVOC(Variant of Concern、注視すべき変異)に指定しました。
Weekly epidemiological update on COVID-19 - 11 May 2021 (who.int)
同変異型ウイルスには、3種類のサブグループ(B.1.617.1、B.1.617.2、B.1.617.3)があります。

B.1.617.1 B.1.617.2 B.1.617.3
報告されている国 34 31 4
G142D変異
L452R変異
E484Q変異
P681R変異

5月31日、WHOはB.1.617.2をデルタ変異と命名しました。

インドでは当初、イギリスから広がったB1.1.7株(アルファ変異)と共にB.1.617.1株が主流でしたが、現在ではデルタ変異(B.1.617.2株)が増加しています。イギリス公衆衛生庁の6月3日の報告では、5月27日からの1週間で、これまで主流であったアルファ型の感染者は3720名増加し、一方、デルタ型は5472名増加しており、英国においてはアルファ型からデルタ型に感染の主体が置き換わったとしています。さらに6月14日のLancet誌の論文では、スコットランドでも急速にアルファ型からデルタ型に置き換わったことが報告されています(図1)

感染性について、英国公衆衛生庁は、5月22日現在、デルタの感染性は、アルファ型より高いが、その程度については未確定と報告しています。さらに家庭内での2次感染の割合は、B.1.617.1株やB.1.617.2株は、B.1.1.7株より約1.5倍高いと報告しています

デルタ型ウイルスの病原性については、上記のLancet誌の論文で、デルタ型の入院率はアルファ型の約2倍であると報告しています。ハムスターへの感染実験から、従来株よりも病原性が高いという査読前の報告もあります。

ワクチンの効果に関しては、やはり上記のLancet誌の論文でファイザー社製ワクチンの2回接種のデルタ型に対する感染抑制効果は79%と、アルファ型に対する92%の効果と比べると少し低いものの、依然として高い効果があることが報告されています。
またイングランド公衆衛生庁も6月14日に査読前のデータを公表しています。これによると、ファイザー社製のワクチンは、デルタ型変異ウイルスによる入院を、2回接種後は96%、1回接種でも94%、減少させたとしています。庁は、ファイザー社製ワクチンの2回投与により、デルタ型変異ウイルスの発症を88%予防したという有望なデータを5月20日にも公表しています。

実験室でのデータとしては6月3日にLancet誌に公開されました。それによると、ファイザー社製のワクチンを2回接種した人における中和抗体(ウイルスの感染を抑える抗体)の量は、従来型のウイルスに比べるとアルファ型に対しては2.6分の1に低下、デルタ型に対しては、5.8分の1になっています。また従来型ウイルスに対しては1回接種でも多くの人で十分な量の中和抗体が出来るが、デルタ型に対しては2回接種が必要なことを示唆しています。

5月12日にNew England Journal of Medicine誌に公開された論文によると、ファイザー社製のワクチンは、L452R変異や、E484Qに近いE484K変異に対しても、試験管内ではありますが、十分な効果があることが示唆されています。

図1 スコットランドでの変異型の推移
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