山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

緊急事態宣言後、いったんは減少していた感染者数が再び増加しています。今、私達が見ているデータは、約2週間前の状況を反映しています。今のところは感染者の多くは軽症者で医療現場への負担も少ないようです。しかし、この2週間で私たちの行動がさらに緩和しているとすれば、さらに感染者が増えてしまうかもしれません。自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守るため、自分たちの行動を見つめなおす必要があります。

新着情報

「新型コロナウイルス感染症の差別・偏見問題に関する共同声明」に対する御礼

PDFファイルを表示
研究者・臨床家として新型コロナウィルス感染症に関わる山中、押谷、長谷川、大曲の4名は、新型コロナウィルスのすべての感染者と、予防や対処がとりわけ難しい医療従事者や医療施設に対する偏見や差別が広がっている日本社会の現状を憂慮し、報道機関への協力と協働を求める「新型コロナウィルス感染症対策に関する、研究者・臨床家から報道機関への要望書」を、2020年4月24日、一般社団法人日本新聞協会、ならびに一般社団法人日本民間放送連盟に提出しました。
二つの団体におかれてましては、問題の重大性と緊急性を真剣に受け止めて頂き、二団体合同のワーキング・グループを設置して頂きました。その後、ワーキング・グループと私共4名を含む専門家と二度の意見交換の機会を設けて頂き、2020年5月21日、二団体による「新型コロナウイルス感染症の差別・偏見問題に関する共同声明」を公表して頂きました。迅速なご対応に深く感謝申し上げます。
新型コロナウィルス感染症の問題はこれからも続きます。感染者や感染施設に対する差別や偏見の問題もすぐにはなくならないと考えられます。報道機関の方々と、私たち専門家が、感染者や感染施設に寄り添い、みながともに手を携えて生きることのできる、やさしい社会を実現できるよう、引き続きのご協力とご協働を、あらためてお願い申し上げます。  

2020年5月22日
山中伸弥(京都大学教授)
押谷仁(東北大学教授)
長谷川好規(名古屋医療センター院長)
大曲貴夫(国立国際医療研究センター国際感染症センター長)

村上Radio特別番組

私が敬愛する村上春樹さんが、新型コロナウイルスで暗くなっている世の中に灯りをともすため、5月22日に自宅書斎から特別番組を放送されました。2時間にわたる素敵な音楽と語りで、心が明るくなりました。しばらくはradikoで視聴可能と思います。なんと私は「AB型の伊勢海老」という豪華なラジオネームを頂きました!
番組の最後に、「新型コロナウイルスとの戦いは、殺しあうための力の戦いではなく、生かしあうための知恵の戦いだ。どれだけ助け合い、励ましあえるかが試されている」という趣旨のお話をされました。本当にその通りだと思います。まだまだ長い対策が必要ですが、みんなで助け合い、励ましあいましょう。

実効再生産数(Rt)の計算を試みました

新型コロナウイルスに対する対策は微妙な手綱さばきが求められます。緩めすぎると感染者の急増と医療崩壊を招きます。締めすぎると、休業自粛をお願いしている方々の生活が崩壊し、また抗体を持つ人の数がなかなか増えないため、第3波、第4波に対して脆弱になります。一人から何人に感染が広がるかを示す実効再生産数(Rt)を1未満で維持することが目安になります。Rtは統計や公衆衛生の専門家でないと算出できないと思い込んでいましたが、昨日に紹介した論文でエクセルを使って算出する方法が報告されています。そこで、専門外の科学者がRtを計算できるか試みてみました。Rtは、国や自治体の対策方針を決める重要な指標です。複数の研究者が独自に算出し、科学的議論に基づいた政策決定が健全と思われます。問題提起のために、専門外ではありますがあえて計算してみました。私の理解不足等による計算ミスもあり得ますので、あくまでも参考値としてお示しします。
(方法)
1.Coriらの論文からRtを計算するためのエクセルシートをダウンロード
2.Biらの論文からSerial intervalの平均を6.3日、標準偏差を4.2日と仮定
3.大阪府、北海道、および京都市のホームページから感染者数の推移をダウンロード
4.エクセルに感染者数を入力し、Rtを計算。
(コメント)
この結果は、あくまでも専門外の私が1つの論文で報告された方法に基づき計算したものであり、専門家の方から見るとお叱りを受ける点も多いと思います。
しかし、大阪府民である私から見ると、大阪府のRtが4月21日に1を下まわり、5月1日現在で0.6程度という計算結果は、府民の努力が報われているようで嬉しく思います。この値が続くようであれば、経済活動等を少し緩和出来る可能性を期待します。しかし油断は禁物で、緩めすぎるとRtはあっという間に1を超えると思います。
京都市も市民の努力で4月16日以降、Rtの平均値は1未満とい結果です。しかし95%信頼区間の上限は1以上という結果ですので、努力を維持する必要がありますし、iPS細胞研究所でも活動を引き続き普段の約20%に抑えたいと思います。
北海道は、4月11日の段階で2.7という計算結果でしたが、道民の皆様の頑張りで、5月2日には1.12という計算結果です。まだ1を超えていますので、引き続きの頑張りが必要と思われます。
東京では、新規感染者を見つけるための検査数の実態を知ることが出来なかったため、Rtの計算は断念しました。
大阪府のRt推移
京都市のRt推移
北海道のRt推移

ジョギングエチケット

下記は、休日の皇居や大阪城など、多数のランナーや散歩をされる方が集中する場所を念頭に置いて提案しています。人がまばらな時のジョギングや、グランドでの屋外スポーツに関する提案ではありません。紹介している報告は、さらなる科学的検証が必要です。しかし、周囲にたくさん散歩の方がおられる時は、エチケットととしてマスク等を着用することにより、お互いに気持ち良い時間を過ごすことが出来ると思います。夏用の涼しい製品も販売されています。これからは特に蒸し暑くなっていきます。私は走るコースや時間を工夫し、周りに人がいないときは覆いは外し、散歩の人等がおられるときはさっと覆うようにしています。

外出自粛が続いていますが、時々のジョギングや散歩はOKと言われています。以前より、ジョギングをする人が増えているようにも思います。新型コロナウイルスは感染しても多くの人は無症状です。発症する場合も、潜伏期にすでに感染力があると考えられています。ジョギングできるくらい元気でも、実は感染しているかもしれません。走って大きな息をするときは、咳やくしゃみと同じように周囲への配慮が望まれます。マスク、もしくはバフ、ネックゲイター等でジョギングエチケットを心がけましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=sO1BmlMij8c

走る時は、10メートルくらい離れないと感染の危険があるという報告もあります。

https://medium.com/@jurgenthoelen/belgian-dutch-study-why-in-times-of-covid-19-you-can-not-walk-run-bike-close-to-each-other-a5df19c77d08

3種類の被害者

普通の病気は、患者さんや家族を苦しめます。しかし、新型コロナウイルスはより多くの人を苦しめています。
1.感染した方、そのご家族
2.エッセンシャルワーカーの方々。医療従事者、公共交通、物流、インフラ、小売り、窓口業務など、自らの感染リスクと、偏見や差別に耐えながら社会を支えて頂いている方々。(提言)
3.活動自粛により、仕事、介護、教育などの権利を奪われている方々
収束には長期間を要します。しかし夜は必ず明けます。それまでの間、これらすべての方々を守らなければなりません。
私はどれにも該当しません。一番の社会貢献は、できるだけ外出を控えてエッセンシャルワーカーの方々への負担を減らすことです。しかし、それ以外に何か出来ないか、常に模索しています。一人一人のプラスアルファの努力が求められています。

今、求められる対策は?

ウイルスへの対策は、有効なワクチンや治療薬が開発されるまで手を抜くことなく続ける必要があります。1年以上かかるかもしれません。マラソンと同じで、飛ばし過ぎると途中で失速します。ゆっくり過ぎるとウイルスの勢いが増します。新型コロナウイルスは強力です。しかし、みんなが協力し賢く行動すれば、社会崩壊も医療崩壊も防ぐことが出来るはずです。今、私たちが新型コロナウイルスに試されています。私たちの団結力を見せつけなければなりません!
クリックで拡大します
PAGE TOP