山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

オミクロン株による感染者が世界各地で増加に転じ、日本も第7波に襲われています。重症者数や死者数は従来株やデルタ株が主流であった2020-21年と比べて低く保たれており、多くの国では対策の緩和が続いています。今後も、重症者数や医療体制、さらには後遺症、ワクチン効果、新たな変異ウイルスの出現などを注視する必要があります。

新着情報

科学情報発信の難しさ

下記で解説しているように、科学情報の信頼度には大きな幅があります。このホームページでは、新型コロナウイルスに関する情報を、その信頼度を含めて発信するように心がけています。しかし、実際には非常に難しい作業です。
イギリス政府は、ワクチンのデルタ変異ウイルスに対する効果に関する情報をその信頼度と共に発信し、毎週更新しています。情報の信頼度を表のように色分けして示しています。
同国は日本と同じ3種類のワクチンを使用しています。2022年7月7日の報告によると、オミクロン株に対するワクチンの効果について、ファイザーやモデルナ社製ワクチンの3回目接種後3ヶ月以内においては、発症や入院の抑制効果について中程度の確からしさで認められているとしています(表1)。イギリスでは軽症では入院しません。ファイザー社製ワクチンについては、3回目接種の3から6ヶ月において、発症予防効果は低下するものの、入院については高い予防効果が維持されることが中程度の確からしさで認められるとしています。
4回目接種については、接種後3カ月以内において、3回のみ接種と比べて感染、発症、入院のいずれも半分程度に抑制する効果が報告されているが、さらなる証拠が必要としています(表2)。
情報の信頼度を色分けして示す同国の方法は、科学情報発信を行う上で大いに参考になります。
表1 イギリス政府による情報発信
表2 4回目接種の効果

科学情報の信頼度

私は、科学的な真実は、「神のみぞ知る」、と考えています。
新型コロナウイルスだけでなく、科学一般について、真理(真実)に到達することはまずありません。
私たち科学者は真理(真実)に迫ろうと生涯をかけて努力していますが、いくら頑張っても近づくことが精一杯です。真理(真実)と思ったことが、後で間違いであったことに気づくことを繰り返しています。
その上で、私の個人的意見としては、医学や生物学における情報の信頼度は以下のようになります。

本情報発信では、各情報の根拠を明らかにし、下記の分類のどれにあたるかが判るよう心掛けています。

真理(真実)
>複数のグループが査読を経た論文として公表した結果
>1つの研究グループが査読を経た論文として公表した結果
>査読前の論文
>学術会議(学会や研究会)やメディアに対する発表
>出典が不明の情報


査読とは、他の研究者(専門家)が内容を検証することです。科学雑誌に論文を投稿すると、編集者が依頼した複数の研究者(数名)の査読を受けます。査読者は、論文の内容を検証し、そのまま公表すべきか、追加実験が必要か、それとも却下すべきかの意見を編集者に伝えます。編集者は、複数の査読者の意見を受けて最終決定を行います。しかし、査読を経て公表された論文であっても、後になって間違いであることが判明することもあります。複数の研究グループにより研究内容が再現され、複数の論文として査読後に発表された場合、信頼性は高くなります。しかし、その場合であっても、後になって間違いであることが判明することがあります。
最近は、査読前の論文であっても、インターネットで公表されることが増えています。査読前の論文は、参考にはするべきですが、他の研究者による公式の検証は受けていません。ただ、詳細なデータや実験方法は公表されますので、多くの研究者が独自に検証することが出来ます。
論文として公表する前に、学会やメディアに公表することも良くあります。メディアにより大きく報道される場合もあります。しかし学会やメディアにおける発表は、公表される内容が限られるため、検証が難しく、発表内容を鵜呑みにすることは危険です。
最近はSNS上等で、出典が不明の内容が拡散することも多くなっています。出典が不明の情報は、玉石混交と考えるべきです。
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